CUPRITE キュプライト 赤銅鉱 Cu2O
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銅の酸化鉱物で、銅鉱床の上部、天水の影響を受けやすい部分に産出することが多い。銅をたくさん含む鉱物で、鉱石的には高品位であるが、まとまった量としてはあまり産出しない鉱物である。 産状として熱水鉱脈が主たるものであるが、接触変成鉱床の酸化部分や蛇紋岩中の銅鉱床に産することがある。 現在までに観察したことのある産出状況は、石英の晶洞を充填するもの、粘土の中に粒状の結晶集合体が産するもの、クリソコラの中に脈状に産するもの、母岩の中に赤銅鉱(キュプライト)単体で脈状に産するもの、石英の晶洞などに他の赤銅鉱を伴わず単独の小さな結晶をなすものである。孔雀石や自然銅を伴うことも多く、赤銅鉱(キュプライト)を割ると、自然銅の銅色がピカリと光ることがある。フィールドでは孔雀石の緑の石を見つけて割ると、赤銅鉱(キュプライト)がでてくることがあるので、要注意である。 私は赤い色合いの金属鉱物というこの赤銅鉱がたまらなく好きで、赤銅鉱(キュプライト)を産する産地を色々訪れてきたが、基本的には銅の高品位鉱石であり、鉱石として回収されてしまっているため、フィールドで良標本を得ることが結構難しい鉱物である。 憧れの赤銅鉱(キュプライト)を最初に採集できたのは 石川県の大谷鉱山であった。開発時代不詳のズリが川に露出している場所があり、その川が氾濫すると、古い時代の鉱石が露出することがある。そんな時に青鉛鉱の青や孔雀石の緑に染まった丸い石を割ると、塊状の赤銅鉱を石英の中に島状に含んでいることがあり、ずしりと重い標本得られることがある。最初に採集できたこの産地の標本は特に思い出深い。 標本的に最も立派なものを得ることができたのは、秋田県亀山盛鉱山である。この亀山盛鉱山は白鉛鉱の結晶標本の素晴らしいものを産することで有名であるが、実は赤銅鉱(キュプライト)もかなり立派なものを産出している。現在知られている大きなズリに至る川には、鉱山開発初期に捨てられたと思われる石が所々点在しており、そのなかから得られた。水晶の晶洞部分を赤銅鉱が充填したもので、同様のものは近隣の荒川鉱山の標本でも見受けられる。 その後は岡山県大笹鉱山、山口県大和鉱山、島根県銅ケ丸鉱山で得ることができた。私の所感では、中国地方の銅鉱山には脈状の赤銅鉱を産することが多いように思う。 岡山県の大笹鉱山は花崗岩中の黄銅鉱や閃亜鉛鉱の鉱染状鉱石を採掘した場所である。その鉱石は全体としては決して高品位と言えないものであり、なおかつ脈幅も狭いものであるが、部分的に赤銅鉱、自然銀を多く含むことがある。 山口県の大和鉱山は接触変成帯中の銅鉱山で、古代からの銅採掘地としても有名である。珪岩中に赤銅鉱単独の脈が走る石があり、そういうものを脈に沿って上手く割ると、一面赤銅鉱となる標本を得られることがある。 島根県銅ケ丸鉱山は花崗岩中の鉱脈銅鉱床で、母岩中に放射針状に結晶した孔雀石を伴い、赤銅鉱の脈が走るものと、珪質の石にクリソコラを伴い赤銅鉱が脈状になったもの、母岩中に鉱染状に白雲母、黄銅鉱、閃亜鉛鉱を伴い、赤銅鉱ができているものがある。鉄バンザクロ石の粒状結晶を伴う特異な鉱石である。 日本の主な赤銅鉱(キュプライト)産地 秋田県鹿角市尾去沢鉱山 秋田県大仙市亀山盛鉱山 秋田県大仙市日三市鉱山 秋田県大仙市荒川鉱山 栃木県日光市小来川鉱山 栃木県日光市日光鉱山 石川県小松市高見鉱山 石川県小松市大谷鉱山 石川県小松市尾小屋鉱山 兵庫県猪名川町柿ノ木鉱山 岡山県総社市大笹鉱山 島根県川上村銅ケ丸鉱山 山口県美祢市大和鉱山 福岡県福岡市博多区金隅
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日本の鉱物標本 英名リスト