EPIDOTE 緑簾石 Ca2(Al, Fe)3(SiO4)3OH |
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エピドートは緑簾石(りょくれんせき)のことを差し、同一の結晶構造を持つ仲間の総称として緑簾石(エピドートEpidote) Ca2(Al,Fe)3OH(SiO4)3 褐簾石(アラナイトAllanite) Ca(Ce,La,Y,Th)(Al,Fe,Mg)3OH(SiO4)3 紅簾石(ピーモンタイトPiemontite) Ca2(Al,Fe,Mn)3OH(SiO4)3 黝簾石(ゾイサイトZoisite) Ca2Al3OH(SiO4)3 灰簾石(クリノゾイサイトClinozoisite) Ca2(Al,Fe)3OH(SiO4)3 がある。エピドートとゾイサイトの2種に関しては宝石として採掘されることがある。基本的にこれらの石は簾石の名が示すように簾状の外観を持つ細かい柱状の結晶の集合体である場合が多く、大型の透明な結晶を産することが少ないのと、縦に結晶が割れやすい性質のため、宝石としてカットされることが少ない。 エピドートは花崗岩や安山岩といった珪素(SiO2)の多い岩の晶洞中に細かい結晶が林立する場合や、量的には石灰岩が熱変成を受けて変質 したスカルンと呼ばれる岩石(カルシウムと鉄、マグネシウム、珪素を主とする)として、ヘデンベルグ輝石や灰鉄石榴石とともに岩体を形成している場合がある。スカルン中の晶洞中には、やや大型で宝石質の結晶を産することがある。 このエピドートには明瞭な2色性があり、結晶の見る方向によって緑に見える場合と茶色に見える場合があり、面白味のある鉱物標本である。 私と緑簾石との出会いは、秩父鉱山産が最初であった。大黒坑の前の河原の石に白色の脈が走っており、その脈に沿って割ると緑色の美麗な柱状結晶が多数出てきた。帰宅後脈石である方解石を塩酸にて溶かすと、美しい緑簾石の結晶と黄鉄鉱の結晶がきらめき、小さいながらもお気に入りの標本となった。 その次は長野県武石村の通称やきもち石と呼ばれるもので、安山岩の中に最大10センチほどの球顆が存在し、その球顆を割ると空洞の部分に柱状の緑簾石結晶が族生しているというものである。大きな結晶はないものの、球顆の中の晶洞に緑色の光沢の強い結晶が族生している様はとても印象的で、採集に成功した数個の標本はお気に入りの標本となっている。この晶洞中には緑簾石の結晶だけではなく、細かい白水晶が族生するものや、黄銅鉱の結晶が存在するものがあり、とても面白い。 第3の出会いは、長野県甲武信鉱山である。この鉱山は山域の随所でザクロ石やベスブ石などのスカルン鉱物を産し、量は少量であるものの緑簾石の結晶を山中の随所で産する。現在までに産出が知られている場所は数箇所で、スカルンの中に角閃石に包まれて分離した6センチまでの結晶を産する場所(残念ながら表面光沢がなく、結晶面がいまいち平滑ではないので、美しさに欠ける)、ホルンフェルス中の小ベスブ石岩体の晶洞中に10センチまでの結晶(こちらはやや透明感があり、なおかつ表面光沢も美しいが、頭部の結晶が箒状に細かく分かれており残念)として産出する場所などがある。 第4の出会いは長野県南相木村の産地である。この場所は時代不詳、目的鉱物不明(水晶目的?)の採掘跡が山中の随所にあり、水晶やスカルン鉱物が所々落ちている。この産地の緑簾石には白い水晶の群晶の中に1センチほどの柱状結晶として産するものと、結晶質塊をなすものがあり、透明感こそないとは言え、割としっかりとした結晶として産し、見ごたえがある。 第5の出会いは福島県矢塚である。この産地はザクロ石の岩体の中に所々結晶質緑簾石の集合体を産するという場所で、緑簾石の集合体の中のやや大きな晶洞部分にはセピオ石と水晶を伴い7センチまでの大型結晶を産した。この産地の緑簾石は結晶がシャープでなおかつ透明感の素晴らしい結晶で、透過光の下ではっきりとした多色性を観察できる。結晶のほとんどが双晶をしており、柱面の中央部分に双晶面を観察することができる。透明な緑の中に縦に一本の褐色の線が入っており、面白いものである。 日本の主な緑簾石(エピドート)産地 岩手県釜石市釜石鉱山 福島県塙町矢塚 福島県塙町長久木 福島県郡山市中津川 埼玉県大滝村秩父鉱山 長野県川上村甲武信鉱山 長野県川上村三宝山 長野県南相木村中島 長野県武石村 奈良県天川村 福岡県田川町磁石山
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